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寄稿 期待されるプログラムCDM

三菱UFJ証券 (現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
志村 幸美

(月刊 エネルギーフォーラム 2009年11月号)

プログラム全体がCDM案件

温暖化対策の議論が活発化する中、昨今国連で開発された「プログラムCDM」に注目したい。
従来型のCDMは、個別の温室効果ガス削減事業を個々のCDMプロジェクトとして国連に登録し、温室効果ガス削減クレジットを創出するものである。これに対しプログラムCDMは、温室効果ガス削減事業を普及させる「プログラム」全体をひとつのCDM案件として登録する新しい仕組みである。

プログラムCDMは、途上国の温室効果ガス削減の政策推進を、大局的に支援するために確立され、その特長から、一部の関係者からは「政策CDM」とも呼ばれる。多くの途上国では、省エネ基準や排ガス・排水などの環境法令が整いつつあるが、必ずしもこうした法令が順守されていない。プログラムCDMの活用によって金銭的なインセンティブを付与し、法令順守を促進することや、排出削減規模の小さい個々のプロジェクトをプログラムにより統合することで、これまでCDM化が進んでいなかった省エネプロジェクトが活性化されることが期待された。
現在のプログラムCDMの規定では、国や自治体による政策の枠に限定されることなく、温室効果ガス削減が見込める事業の普及プログラムにも適用可能となっているため、政府機関に加えて、自発的に温室効果ガス削減の普及プログラムを実施する民間団体や企業も、独自の事業をCDM化することが可能となる。企業にとっては、資金の関係で一度に実現するのが困難な、海外工場や営業所のエネルギー効率推進事業をプログラム化し、多年度に渡って事業を実施し、積み立て式に排出権を増加できるメリットがある。

極端に案件の少ないプログラムCDM

ベトナムの幼稚園屋根に設置された太陽熱温水器
ベトナムの幼稚園屋根に設置された太陽熱温水器

このように多くの効果が期待されたプログラムCDMだが、現在まで、登録済みのCDM案件が1800件以上ある中で、いまだ1件のみという状況である。
高い期待に反し制度が活用されていない主な要因として、手続きは整備されているものの、実際の政策に基づいたプログラムや事業への適用が難しいからだとの指摘がある。これは、プログラムCDMの手続きがあくまでも個々の案件に対するルールを基盤としていることに起因している。例えば、プログラムCDMはひとつのプログラム活動 (PoA) にCDM活動 (CPA) を追加しながら最大28年間排出権を請求できるが、管理者はその期間、方法論の改定を把握し、それに伴う継続的な対応を余儀なくされるなど、運用管理が容易ではない。
周知のとおり、我が国では新政権の下、2020年までに1990年比25%の温室効果ガス削減という壮大な目標が発表された今日、目標達成に向け多種多様な政策の実行が不可避である。CDMを通じ海外から排出権を購入することに対しては賛否両論がある一方で、国内での削減だけでは目標達成は極めて困難である。いまだ見えない2012年以降の国際クレジット取引制度であるが、プログラムCDMは、途上国の持続的な発展に資するのみならず、日本の省エネ技術の海外展開の礎となるであろう。

その有効性を既存のプロジェクトを例に分析してみたい。唯一国連に登録されているオーストラリア企業がメキシコで実施するプログラムCDMは、家庭で使用されている白熱灯と高効率な蛍光灯を交換することで、各家庭の照明による電力消費量を抑え、温室効果ガス排出量削減に寄与するものである。プログラム化された3000万個の蛍光灯を交換することにより、10年間で810万t (2009年10月現在おおむね13.60EUR/tCO2) のCO2削減が見込まれている。
また、再生可能エネルギープロジェクトの例としては、三菱UFJ証券がCDMコンサルタントとして取り組んでいるベトナムの住宅を対象とした太陽熱温水器設置事業がある。この事業は、現地機関の政策推進として実施されているが、日本企業が高い優位性を持つヒートポンプなどの高効率機器の海外マーケットへの普及を促進するスキームとして注目される。

プログラムCDMの平準化・実用化に期待

初期投資の資金確保が障害となる途上国の案件推進には、プログラムCDMと他の資金メカニズムとの融合も検討したい。RESCO (再生可能エネルギーに特化したESCO) 事業など、設備コストが高価な機器の導入を伴うサービスをプログラム化し、従来の光熱費削減による利潤に加え、排出権販売による利益を回収コストとして見込むことで、事業収益性を安定化させ、ホスト国ユーザーに対してもより質の高いサービスの提供を可能にする。

このようにプログラムCDMは、日本企業の海外省エネビジネスを促進する効果が期待されるが、いまだ多くの課題を有していると言わざるを得ない。これまでCDMは、「learning-by-doing」 (経験を通じて学ぶ) の精神に基づき進化を遂げ、多くの問題を改善してきた。プログラムCDMも同様に、多くの先進事例の実施により、平準化・実用化されることを期待するとともに、当社もその一翼を担っていきたい。