投資家心理が表れる恐怖指数が上昇か?過去のVIX指数はどうだった?

2023/4/28

著者/ロン横浜

米国株式市場で恐怖指数ともいわれるVIX指数が、2022年9月後半~10月前半にかけて危険領域とされる30を長期間にわたって超えました。その間S&P500種株価指数は、年初来安値を更新しています。過去のパターンを見ても、VIXが30を超えるときは市場が乱高下し大きく下げる例が多くあります。

本コラムでは、VIX指数の概要やVIX指数を考慮した投資への対応などについて解説します。

VIX指数とは?

VIX指数とは恐怖指数ともいわれ、株式市場に対する投資家の心理状態を指数化しており、投資家のリスクコントロールに活用されている代表的指数の一つです。

なぜ恐怖指数といわれるのか?

VIX(Volatility Index)指数は、米国の主要株価指数の一つ「S&P500種株価指数」の今後30日間の変動率を予測する指数です。シカゴ・ボード・オプション取引所(CBOE)がS&P500種株価指数のオプション価格をもとに算出しており、Volatility(ボラティリティ)は日本語で変動率と訳します。金融市場において変動率が高いことは、大きなリスクです。

VIX指数は、先行き不安やリスク回避姿勢が強まったときに激しく変動するため「恐怖指数」とも呼ばれています。

S&P500はリスクオン、オフの代表的指標

VIX指数の上昇は、S&P500種株価指数の変動率が高まっていることを示しています。つまり市場参加者が「市場は乱高下する可能性が高まっている」と予想しているのです。一般的に市場が急落するなど相場の変動が激しくなるときにVIX指数が高まるケースが多いです。

例えば以下のように米国株のリスクオン、リスクオフをコントロールする指標ともいえるでしょう。なお、あくまでも参考指標の一つなので実際に投資する際は十分に分析したうえで判断しましょう。

VIX指数が高いとき:米国株投資のポジションを縮小する など

米国株は、日本の株式市場と連動性が高いため、日本株でもリスクオン、リスクオフを検討する際の指標になります。

日経平均のボラティリティ指数が日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)

米国のVIX指数に対して、日本株には「日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)」という指数があります。これは、日経平均株価の将来的な変動の大きさを推定した指数です。日経平均先物や日経平均オプションの価格をもとに日本経済新聞社が算出しています。

VIX指数30超えは危険領域

VIX指数は、どのようにリスクオン、リスクオフの指標として活用されているのでしょうか。ここでは、過去のVIX指数の変動例から振り返ってみましょう。

2022年9月に30超の危険領域に

2022年9月26日~10月3日まで6営業日連続でVIX指数は、30(終値ベース)を超えました。その後2日ほど30以下となりましたが、2022年10月6日~19日まで10営業日連続で30(終値ベース)を上回っています。その間、S&P500種株価指数は2022年10月3日に3,584.13ポイント(安値)をつけ、同年6月17日の3,636.87ポイント(安値)を下回る年初来安値を更新。

さらに同年10月13日には3,491.58ポイントと年初来安値まで下落しました。VIX指数の上昇が市場のリスクオフによる下落を予想していた好例です。足元でVIX指数の推移とS&P500種株価指数(図1)の動きを見てみるとVIX指数が30超えでS&P500種株価指数が下げていることが分かるでしょう。

(図1)VIX指数とS&P500種株価指数の日足チャート(2021年12月10日~2022年11月30日)

ローソク足:VIX指数、オレンジ線:S&P500種株価指数

(出典:「TradingView」2022年12月1日)

20以下青信号、20超で黄色信号、30超は赤信号

VIX指数とS&P500種株価指数の値動きを長期で見ると、一般的に以下のようなことが考察できます。

  • VIX指数が20以下のとき:市場に懸念材料が少ない安全な状態(青信号)
  • VIX指数が20を超えたとき:市場に少し懸念材料がある状態(黄信号)
  • VIX指数が30超えたとき:市場に懸念材料が多く注意が必要な状態(赤信号)

VIX指数が大きく変動した過去の事例

VIX指数の長期チャート(月足)を見ながら過去の大幅下落時のVIX指数を見ていきます。

VIX指数長期チャート

以下の図2は、1994年以降のVIX指数の月足です。リーマン・ショック時の2008年に過去最高値をつけたほか、2002年のITバブル崩壊時、2020年のコロナ・ショック時などにVIX指数が大きく上昇したことが分かります。株式市場が大きく下落する局面をショックなどと名付けることがありますが、代表的なショック時のVIX指数は以下のように急騰しました。

(図2)VIX指数の月足チャート(1990年1月~2022年11月)

(出典:「TradingView」2022年12月1日)

上述のように相場環境が悪化し、変動性が高まるとVIX指数は高くなります。例えば2008年10月のリーマン・ショック時には、VIX指数は過去最高の96.40まで上昇。その後、50を下回るまでに数ヵ月かかり、落ち着いたのは1年以上経ってからでした。

また、2020年3月のコロナ・ショック時は85.47まで上昇。その後、世界主要国が過去最大級の金融緩和・景気対策をしたため、2020年5月には30(終値ベース)を割り込みましたが、20(終値ベース)を割るのは2021年3月と約1年かかっています。

VIX指数と日経平均VIは連動性が高い

VIX指数は、市場の懸念材料を織り込むため、米国株と連動性の高い日本株の日経平均VIとも以下の図3のように連動性が高くなります。VIX指数1つを見ておけば、米国株と日本株のリスクコントロールにも有効といえるでしょう。

(図3)VIX指数と日経平均VI比較チャート(2019年10月7日~2022年11月14日)

青線:VIX指数、赤線:日経VI

(引用:株式会社ストックブレーン「世界の株価と日経平均先物」2022年11月14日)

VIX指数を考慮した対応

投資をする際にVIX指数は、どのように応用すればいいのでしょうか。ここでは、2つの対応について解説します。

狼狽売りが避けられるようになる

VIX指数が上昇傾向の際は、焦って資産の狼狽売りをするのは好ましくないことが多いです。過去の傾向を見る限り、VIX指数が上昇してもいずれ落ち着くタイミングはあります。時間はかかるかもしれませんが、焦らず資産額の回復を待つのも一つの手です。

分散投資でリスクをコントロールする

投資の基本は、分散投資です。偏った資産に投資をしていると相場急落時に大きな打撃を受けかねません。普段から急落時の影響を考えながら分散投資をすることで、VIX指数が高くなった際も大きな影響を受けずに済みます。

過去のVIX指数の値動きを知ることで、ご自身に合った投資方法を考えるきっかけになるのではないでしょうか。

まとめ

投資では、リスクコントロールが大切となるため、VIX指数の見方をリスクコントロールの一つとして参照するようにしましょう。VIX指数をウォッチしておけば、狼狽売りを避けられる可能性が高まります。長期運用においては、基本的に常時急落に備えて分散投資をしておくことが大切です。

ロン横浜

ロン横浜

ロン横浜

証券界、主に外資系で30年の経験。日本株、海外株、デリバティブ、投信、債券まで、幅広い範囲での実績を誇る。得意とするのは、小型株、米国株の分析。現在は「この経験を若い投資家に伝えるため」外資系証券仲間とともに投資情報発信中。

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