米国(アメリカ)の政策金利とは?推移とその影響も解説

2024/12/25

執筆者/髙木典子

米国(アメリカ)の政策金利とは?推移とその影響も解説

そもそも「政策金利」とは?

政策金利は金融政策の一環

各国中央銀行は景気や物価の動向をコントロールするために金利や通貨の供給量を調整する金融政策を行っています。この金融政策の一環として、中央銀行が設定する金利政策金利といいます。この政策金利は経済全体の金利水準に大きな影響を与え、物価の安定や経済成長を目的として調整されます。

米国(アメリカ)における政策金利は、民間銀行間で資金をやり取りする際の短期金利である「フェデラル・ファンド金利(短期FFレート)」を指します。米国の中央銀行の最高意思決定機関であるFRB(米連邦準備制度理事会)がこの短期FFレートの誘導目標を変更することで金融緩和あるいは引締めを行っています。
日本では政策金利を「0.25%程度」などと表示しますが、米国では、「5.25%から5.5%」と0.25%の幅をもたせた数値で表示されます。

政策金利はFOMCで決められる

この政策金利は、年8回開催される中央銀行の会議において決定されます。
米国では、FRBが開催するFOMC(米国連邦公開市場委員会)の会議で金融政策について議論され、方針が発表されます。FOMCは毎回2日間にわたって開催され、終了後に声明が発表されます。FRBのHPには開催日程が掲載されています。
金融政策にはいくつかの方法があり、そのうちの一つに政策金利の誘導目標の調節(利上げ・利下げ)があります。そのほか量的緩和や量的引締めなどもあります。中央銀行は様々な手法を使って金融市場の調整を行っています。

利上げ・利下げ・据え置きとは?

利上げとは

景気の過熱、急激なインフレなどは経済に悪影響を及ぼします。それを抑える一つの方法が、中央銀行が国内の金融機関に対する貸出金利を上げる方法で、これが「利上げ」です。
中央銀行が利上げをすると、個人や会社に対する金融機関の貸出金利も上昇し、お金が借りにくくなります。その結果、家計は支出を控え、企業は設備投資を控えるなど景気全体の過熱を抑える効果が期待できます。

利下げとは

一方、景気の後退局面においては、景気刺激策として、中央銀行は金融機関に対する貸出金利を下げます。これが「利下げ」です。
利下げによって、お金が借りやすくなり、家計は支出を増やし、企業も積極的に設備投資を行い、経済の活性化につながります。

利上げ・利下げの影響

利上げ・利下げの影響
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(画像=筆者が作成)

据え置きとは

FOMCにおいては、必ずしも毎回利上げ・利下げを行うわけではありません。金利を変動させず現状維持する、つまり「金利の据え置き 」ということも多々あります。
金利を調節すると、経済や市場に大きな影響を与えるため、慎重に行わなくてはなりません。必要がなければ変更はせず、そのまま見守るということもあるのです。

米国(アメリカ)の政策金利が日本に与える影響は?

金利と為替の関係

金利の影響を大きく受けるものとして為替が挙げられます。例えば、米国の政策金利が上昇し、日本が金利を据え置いた場合、日米の金利差が拡大します。そうするとドル資産を持っているほうが高い金利を得ることができるので、ドル資産を購入する人が増えて、ドルの需要が高まり、ドル高円安となる傾向にあります。逆に米国の政策金利が下落した場合、金利が低い通貨は魅力が減少しますので、通貨価値が下落して、ドル安円高にふれる可能性が高まります。

また、為替は日本の企業業績にも大きな影響を与えます。海外で販売した商品の売上を円換算した場合、円安のほうが円高のときよりも売上金額は多くなりますので、輸出企業にとって円安は有利に働きやすくなります。日本の代表的な企業には輸出産業が多いため、円安になると日本全体の株価は上昇する傾向にあります。ただし、円安は輸入企業には不利になりますので、個別の銘柄で考えれば、一概に円高が良いともいえません。
一方、企業側でも、為替リスク対策として為替予約をおこなったり、円建てで取引を行うなどの対策を講じています。輸出企業では、現地生産などを行うことで為替に左右されにくい企業体質に改善するといった工夫をしているようですので、少し為替が動いたからといって、すぐに業績に影響が出るわけではありません。とはいえ、予想外に大きく動く場合には、業績への影響も大きくなるので金利変動時には為替の動きを注視する必要があります。

金利と株価の関係

金利と株価の関係を資金の動きとあわせて考えてみます。金利が上がると、預金金利や債券に付く金利が増えるため、リスクを取って株式投資をしなくても、低リスクで金利が付くほうにお金が流れます。よって株価は下落傾向になります。
逆に金利が下がると、金利が低い預金や債券に投資しても、あまりメリットがないため、これから経済が上向きになって成長が期待できる株式投資に資金が流れ、株価は上昇傾向となります。

米国の株価が上昇すると日本の株価もそれに影響されて上昇し、下落した場合も同様に米国に追随することが多くあります。これは、「株式というリスク資産から資金が引き上げられるということは、米国だけでなく世界全体のリスク資産から資金が引き上げられるのでは」と懸念されるためです。これをリスクオフといい、リスク資産に投資をしている人は資産が目減りしますので、注意してください。逆に、株式というリスク資産に資金が流れる動きをリスクオンといい、これもまた世界全体へ波及することが大いにあり得ます。

米国(アメリカ)の政策金利の推移

米国の政策金利の動向

下図はここ10年の米国の政策金利の推移です。
金融危機(リーマンショック)の後、景気後退に対応するためゼロ近くまで引き下げられていた短期FFレートですが、2018年には経済が回復し、今度はインフレ懸念のため、金利が段階的に引き上げられました。しかし、その後コロナが蔓延、パンデミックの影響で経済が停滞したことにより、再びゼロ金利政策が導入され、さまざまな景気対策も打たれました。その後、景気が回復し、インフレ懸念が再燃したため、金利が引き上げられたという流れです。
このように、金利は景気と密接に関わり、「金利低下」→「景気回復」→「金利上昇」→「景気後退」→「金利低下」…を繰り返しています。

米国の政策金利誘導目標の推移

米国の政策金利誘導目標の推移
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(引用:FRBのHP)

米国(アメリカ)の金利に関係する指標や動向に注目!

CPI(消費者物価指数)

FOMCが金融政策の方針を決める際に重視している指標があります。
その1つがCPI(消費者物価指数)です。金融政策を行う目的の1つに「物価の安定」がありますが、物価が安定しているかどうかを知る代表的な指標がこのCPIです。CPIが前年比で高い状態がずっと続くと過度な物価上昇(インフレ)を招き、消費者の購買意欲が低下し、企業の売上が減少するといった経済にとってよくない状態に陥るため、政策金利を上げてそれを阻止する動きが強まります。
逆にCPIが前月比でマイナスになり、インフレが抑制されているとみなされると、市場では利下げ期待が高まります。

雇用統計

2つ目の指標は、雇用統計です。雇用統計の中でも特に注目される指標が「失業率」です。失業率が上昇するということは景気後退が懸念されるということになり、金利を下げることによって経済活動の活発化を促します。失業率が低水準で推移していれば、雇用の安定が保たれているとみなされ、基本的には金利は据え置きとなります。
市場では、政策金利が発表される前からこのような指標を確認し、今後金利が上がるのか下がるのかを予測しています。

FOMCメンバーの発言

今後の政策金利がどう動くのかを予測するにあたっては、指標ではありませんが、FOMCメンバーの声明もとても重要です。メンバーはFOMCにおける投票権を持っているため、議長以外のメンバーの発言も注目されます。
FOMCの構成メンバーは12名で、うち7名が理事(議長を含む)、残りの5名はアメリカに12地区ある連邦銀行の総裁です(NY連銀総裁は常任で、残り4名は持ち回り)。FOMCのメンバーがどのような発言をするかによって、「そろそろ金利が動くのではないか」と推測されることがあります。
これは、FOMCでいきなり利上げ・利下げを発表すると市場が混乱するため、その準備段階として、少しずつそのスタンスを市場に知らしめる目的もあります。これは市場との対話を大切にするFOMCの考えでもあり、私たちはメンバーの発言を通してFOMCからのメッセージを読み取ることも政策金利を予測する上で大切です。

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髙木典子

髙木典子

髙木典子

合同会社HAL FP OFFICE代表
証券会社・銀行勤務を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立
個人のマネー相談だけでなく、大学の非常勤講師、専門学校・高校向けの授業、企業向けマネーセミナーや、PTA向けから子供向けおこづかい教室などのあらゆる世代の人たちに向けた金銭教育・投資教育を行い、中立公正な立場からお金についての知識を広げる活動を行っている。

保有資格
ファイナンシャル・プランナーCFP®
証券外務員
DCプランナー

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