「投資にはリスクがつきもの」という言葉があります。投資や運用を始めようとする際に必ず出会う注意喚起だと思います。勿論これは正しいのですが、ここで登場する「リスク」という単語は一般的に認識されているよりも広い意味で使われていることをご存知でしょうか。
「その意味をご説明する前に、まずは「リスク」という単語が一般的にはどのように利用されるかを確認しておきます。国語辞典などで「リスク」を調べてみると、「危険」「危険が生じる可能性」などが第一義として記載されている例が多いことがわかります。恐らくこの意味で先ほどの「投資にはリスクがつきもの」という言葉を理解しても、「投資は危険である」というもっともらしい意味になるので、そのように解釈している方も多いのではないでしょうか。この場合、投資における「危険」とは「損をすること」だと考えるのが自然だと思います。
しかし「リスク」の意味をさらに詳しく確認すると、「危険」の後に「結果を予測できる度合い」や「予想通りにいかない可能性」といった説明もあることがわかります。これは「危険」が好ましくないことが起きるという意味であるのに対して、もう少し広い意味合いです。そして実は投資における「リスク」はこの不確実性の意味で使われています。
一般的には、投資における「リスク」は期待するリターン水準からのブレ幅全体、より平易に表現すれば「良い意味でも悪い意味でも期待を裏切られる度合い」を指します。つまり期待されるリターン水準を下回るのは当然「リスク」ですが、期待以上のリターンを獲得したとしても「リスク」として認識されるのです。
具体例で考えてみましょう。10年後に1500万円となることを目指して、1000万円を投資するとします。単純に計算すると1年あたり50万円(元本に対して+5%)の利益を生み続けることができれば目標を達成することができます(図表1)。
さて、このとき以下の2つのシナリオを考えます。図表2では図表1と比べると利益額は毎年変動していて、毎年50万円という目標額からは乖離してはいるものの、比較的ブレ幅は小さく、結果的に10年後に1500万円というゴールも達成しています。
一方で図表3でも10年後に1500万円というゴールは達成しているものの、投資開始直後に資産額が半分になるなど、利益のブレ幅が非常に大きくなっています。
あらかじめゴールを達成することがわかっているならば、リスクが高くても低くても関係ありませんが、実際にはそのようなことはありません。図表3の場合には、1年目にいきなり資産が半分になってしまったことを受けて、このまま投資し続けていくべきなのかどうか判断を迫られることになります。またそこで投資を続けられた場合、2年目から5年目まで加速度的に損失を取り戻し、一度5年目には一度ゴール水準を達成してしまいます。そこで更なる利益を求めて投資を続けるかどうか、再び判断する必要があります。そして残念ながら投資を続けてしまうと、6年目に利益をすべて失うことになります。リスクが高いとこのような激動の日々を過ごすことになるので、その心理的負担の大きさは想像に難くありません。
上記の例で疑似体験いただいた通り、卑近な表現でまとめてしまえば、「リスク」は投資期間中の感情の変動を表すともいうことができます。
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