ESG Stories

オフサイトPPA向け太陽光発電という新事業への挑戦に
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の調整力がもたらす価値

2024年12月27日

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2023年7月、北海道電力株式会社と株式会社アークは両社出資により「合同会社HARE晴れ」を設立し、 オフサイトPPA※ 向け太陽光発電所の共同開発事業を開始しました。「ゼロカーボン北海道」をめざすこの事業は、 事業形態も事業内容も出資した両者にとって新たなもので、プロジェクト全般のサポートを依頼できる フィナンシャル・アドバイザー(以下、FA)を求めていました。その要請に応えたのが、 当社の『事業を組成する』という視点に立った調整力でした。北海道電力株式会社 再生可能エネルギー開発推進部の坂井淳部長と、 株式会社アークの渡邊賢二代表取締役のお二人に設立時からのお話を伺いました。

※ オフサイトPPA(Power Purchase Agreement):発電事業者が電力需要場所の敷地外に再生可能エネルギー(以下、再エネ) 発電設備を設置し、小売電気事業者が電力系統を経由して再エネ電力を特定のお客さまにお届けする電力購入契約。

再エネニーズの高まり、「ゼロカーボン北海道」への貢献
太陽光発電のスピード感が活きると考えた

「合同会社HARE晴れ」設立までの経緯と、そのねらいをお聞かせください。

【北海道電力株式会社 坂井氏(以下、【北海道電力】)】:2012年に電力の固定価格買取制度(Feed-in Tariff(フィードインタリフ)、 以下FIT(フィット))がスタートして以降、再エネ電力は、国民の皆さんに再エネ賦課金という形で薄く広くご支援いただいたこともあり、 導入が促進されてきました。近年は買取価格がだんだん下がってきて、FITよりPPAが注目されるようになり、 再エネ電力をPPAで直接調達したいという法人のお客さまのニーズの高まりを感じていました。

オフサイトPPAは再エネ電力の導入拡大を図っていく上でたいへん有効で望ましい仕組みであると捉え、当社としても再エネの開発に力を入れて 取り組んでいるところです。再エネには太陽光だけでなく風力、地熱などいろいろなバリエーションがありますが、早く調達を始めたいという ニーズにお応えできる電源としては、やはり太陽光ということになります。北海道には風力発電や地熱発電に適した土地もありますが、 開発は10年スパンで取り組む必要があります。その点、太陽光は電力の供給開始まで2年程度で済みます。そこで、アーク様と組んで 「合同会社HARE晴れ」を設立し、「オフサイトPPA」の枠組みで道内のお客さまに太陽光発電による再エネ電力を供給する事業を展開する ことにしました。

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北海道電力株式会社 再生可能エネルギー開発推進部 坂井部長

【株式会社アーク 渡邊氏(以下、【アーク】)】:当社は、2016年に産業用太陽光発電事業に参入し、2024年11月現在で157件 (自社所有151件、共同所有6件)の太陽光発電所を稼働させています。北海道電力様から合弁事業のご提案をいただいたのは2022年で、 再エネの中でも太陽光を専業にしている会社ということで、事業パートナーに選んでいただいたのだと思います。

電力の需要は、EV(電気自動車)の普及やデータセンターの増加などの要因を考えれば、減ることはないだろうというのが 再エネ業界に共通した認識です。電力需要は増えていくという前提で、それをいかに再エネで賄っていくかがポイントです。 その意味で、オフサイトPPAを活用して太陽光発電が拡大していくことは、当社にとって飛躍のチャンスであるだけでなく、 「ゼロカーボン北海道」の実現に貢献するたいへん有意義な事業だと考えています。


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株式会社アーク 渡邊代表取締役

納得感あるストーリーから協議の一致点を見出すチカラが決め手に

「合同会社HARE晴れ」は、どのような理由から当社をFAに選任なさったのでしょうか。

【北海道電力】:オフサイトPPA向け太陽光発電事業という新たなプロジェクトには、新たなファイナンスの枠組みを構築する 必要があると考えていました。これまで再エネでは小水力発電や地熱発電でプロジェクトファイナンスを行ったことはあるのですが、 当社が主体となって取り組むのは、この「HARE晴れ」が初めてになります。

そこで、エネルギー関連のファイナンスに関して非常に豊富な経験を持つ三菱UFJモルガン・スタンレー証券(以下、MUMSS) にFAをお願いすることにし、2023年2月に正式に契約を結びました。もうひとつ、事業の規模にかかわらずFAを引き受けてくれるという点も、 お願いする決め手でした。

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「合同会社HARE晴れ」が手掛けたイオン北海道株式会社北広島1号発電所

当社のサポートは、プロジェクト推進にどのような点でお力になっていますか。

【北海道電力】:「HARE晴れ」のような事業内容・事業形態のプロジェクトは、過去、あまり事例がないこともあり、 行政手続きや各種契約など事務的作業が非常に複雑、煩雑なものになることが想定されていました。 そこで、当初から、資金調達にとどまらず、事業を組成するという観点からプロジェクト全般のサポートをお願いしました。

「HARE晴れ」では、アーク様が太陽光発電所の「設計(engineering)・調達(procurement)・施工(construction)」(EPC)を担い、 当社が再エネ電力の販売先開拓を担うという役割分担がはっきりしています。その上で対等に意見を出し合ってやっていくことを 原則にしていますが、企業文化の違いや本業の領域の違いから、どうしても協議が難航する場面が出てきてしまいます。 そうしたときに、FAが間に入り、両社の考え方を踏まえて調整してくれます。

特にありがたく感じているのは、単に両社が納得できる案ではなく、「お互いが大事にしているのはこれです。 ですからこの部分は違いを認めて歩み寄ってください。そうすればこれだけメリットが生まれます」という全体のストーリーを つくってくれるところです。合意に至るプロセスが見える化され、とても納得感があります。担当者同士の納得感はもちろんですが、 社内で説明する際も、説得力あるストーリーがあるので「これで進めます」という理解が得やすいと感じています。

「HARE晴れ」のプロジェクトは関係者も多く、検討事項は多岐にわたるのですが、それらの課題一つひとつにしっかりと対応してくれます。 担当者とは毎週、定期的にミーティングを持ち、アーク様にもご協力いただき、スピード感を持って検討、協議を進めることができています。 今も、新しい開発案件の検討がスムーズに進んでいるところです。

【アーク】:当社のEPC側からの資金の要請や許認可の段取りなどもきちんと把握、理解してくれていると感じています。 おかげでプロジェクト全体が円滑に進捗しています。複雑な契約関係もMUMSSのサポートがあって助かっていますし、 何か不明な点があってもすぐに電話して聞けるような良好な関係を築くことができています。

今後のプロジェクト発展に向けて期待するのは
事業環境の変化や太陽光発電開発のスピード感に応える対応力

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これからの「HARE晴れ」の展開の中で、当社にはどのようなことを期待されますか。

【北海道電力】:私たちは2023、2024年度の開発分を「第1弾」と位置付けています。当然、第2弾、第3弾と続くことを想定しています。 第1弾については堅調にご契約いただくことができましたので、同じように、再エネ電力に価値を見出してくださるお客さまのニーズに合わせ、 第2弾、第3弾を積み上げていきたいと考えています。太陽光発電はスピーディに開発できるところが一番の特長、利点です。 そのスピーディさを損なうことなく事業を組成していくところのサポートを、引き続きお願いしたいと思っています。

今後、「HARE晴れ」プロジェクトが発展していくにしたがい、再エネ電力を買ってくださるお客さまは増えていき、 資金の調達方法も変化してくる可能性もあります。そのとき、お客さまや資金の調達先とのコミュニケーションについても助言、 支援をお願いしたいと思っています。

【アーク】:当社も、「HARE晴れ」の第2弾、第3弾の展開に大いに期待しています。北海道には太陽光発電に適した土地が まだまだたくさん残っており、当社もその確保に力を入れ、新たな太陽光発電所建設に向けた準備を整えています。 EPCの立場から申し上げれば、「HARE晴れ」のプロジェクトが、発電所開発がネックになって停滞することがあってはならないと考えています。 そうした点もご理解いただき、これからもご協力いただきたいと思っています。

「合同会社HARE晴れ」は、株式会社アークが北海道千歳市と北広島市において順次建設する太陽光発電所(10ヵ所、計約16MW)からの電力を、 オフサイトPPAの仕組みを使って北海道内の企業に供給している。2023年7月に事業を開始し、 これまでに北海道コカ・コーラボトリング株式会社、イオン北海道株式会社、札幌トヨタ自動車株式会社、 北海道旅客鉄道株式会社の各社と契約を結んでいる。


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MUMSS担当者より:
不動産投資銀行第二部 部長 柳 尚明
新しい枠組みのファンド組成とファイナンスのFA業務
参画したことは、大きな意義のあることだった

「合同会社HARE晴れ」は、北海道電力様がアーク様と組み、再エネ電力を北海道の企業に供給する事業のために設立されました。 オフサイトPPAという枠組みでのファイナンスは実績が少なく、北海道電力様は進め方に悩まれていました。

当社は、ファンドコンセプトおよび各種契約書の作成、プロジェクトファイナンスの条件交渉といった通常のFAとしての業務はもちろん、 プロジェクトの推進を全般的にサポートさせていただいています。

オフサイトPPAは、関係当事者が多く、契約関係が非常に複雑です。参考となる前例がほとんどなく、 関係各所との調整は、問題点を洗い出し一つひとつクリアしていくという地道な作業の積み重ねで、 北海道電力様とは日々連絡を取り合い、プロジェクトの進捗に支障を来たさぬよう努めているところです。

北海道電力様によると、プレス発表した後、オフサイトPPAによる再エネ電力の供給について数多くの問い合わせが寄せられているそうです。 こうした注目度の高い、新しい枠組みのプロジェクトに対して、プロジェクトファイナンスを担う三菱UFJ銀行と共に、 MUFGとして専門的サービスをご提供できたことは意義のあることだと自負しております。

当社としてオフサイトPPAのファンド組成、ファイナンスのFA業務は、今回が初めてでした。この経験を活かし、 私たちの部ではオフサイトPPAファンドの組成に取り組み、新たな金融サービスをより広くお届けしていこうとしているところです。